中学校の教科書の書かれ方

歴史という学問分野のことを漠然と考える時、どちらかといえば面白そうだなと思う。興味がないわけではないのだ。けど中高と、歴史の授業は私にとって苦痛以外のナニモノでもなかった。

あれからずいぶん月日が経った今、私は文部省認定の教科書を使って中高生に日本史を教えている。

で、そこに十代の私には見えなかった大きな問題点を見ている。簡単に言えばそれは

1. 教科書が面白くない

2. 使われている言葉が耳慣れないものばかりで、用語の説明などもあまり意味を成していない

教科書を書いている側に子供たちに分かってもらおう、興味を抱いてもらおうという気が感じられない。

1の面白くない、については限られた時間の中でものすごい量を広く浅く網羅しなければいけないというカリキュラムの問題があると思う。例えば明治維新に伴う「沖縄県の設置」はたぶんフォント12くらいの大きさの文字で8行にまとめられている。

これで当時の沖縄で何があったか分かれ、歴史を面白いと思え、という方が無茶だ。そして2の用語の使い方。当時の沖縄について「琉球王国が清を宗主国としていた」と書かれている。これを読んだ私が最初に思ったことは「?」。早速教科書についている用語解説集で宗主国を調べてみる。

与えられている定義は以下の通り

宗主権(宗主国)

宗主とは「覇権を握る者」を意味しており、宗主国がそれに従う従属国に対して持つ権限が宋主権である。従属国の内政に干渉できるかなど、具体的な内容は宗主国と従属国の関係により様々であるが一般的には従属国の外交権を握っていることが多い。

 

この解説プラス残り7行の描写で、当時の沖縄の状況にピン来いというのは教科書の作成者の傲慢ではないか。しかも13,14歳相手に。

私が中学生の頃はインターネットも普及していなかったから、「沖縄県の設置」なんていうお題に関しては教科書が唯一に近い情報源だったと言って過言ではない。歴史の授業がつまらなくて、大してテストの点数も良くなかった中高生の私は自分を責めた。けど、これって教育する側にも大分問題ありだよね、中高生の私、自分で思ったほど悪くなかったよ、と思うおばちゃんになった私なのである。で、子供ってこういう状況で大人を責めない。自分が至らないから理解できないのだと思ってしまうものの様だ。私自身もそうだったし、教え子たちを見ていてもそう感じる。ちなみに大人になるとこれが逆になる人がたくさんいる。自分が分からないのは情報を提供する側に問題があるからだとまくし立てる人を、大学で研究職についていた頃、地元のコミュニティーなどに向けてイベントをするたびに見かけた。わが身を振り返る限り、この逆転は18歳から32歳のどこかで起こるようだ。